ついに来ました、このトレード。
以前からトレード要求をしていたウェストブルックが、同じくトレード要求をしていたジョン・ウォールとトレードされることになりました。
ロケッツのお家事情は、以前こちらで触れた通りです。
そしてウィザーズの方はというと、エースだったジョン・ウォールがここ2シーズンもの間ケガで欠場していました。
その間に相棒のブラッドリー・ビールが進化を遂げ、平均30点をマークする新エースへと成長していました。
それは良かったんですが、ウィザーズのGMが余計なことを言ったんですね。
「ウィザーズは、ブラッドリー・ビール中心のチームを作っていく」と。
これを聞いたウォールは、当然おもしろくないわけです。
2年間もチームを空けてたんだから、しょーがないじゃん!って世間は思いますけど、当の本人はまだまだ自分のチームだと思ってますから。
スター選手のエゴとはそういうものです。
そこでウォールも、早速トレードを要求したんですね。
やれやれ・・・・みんな簡単にトレード要求しすぎです。
ともあれ、ロケッツとウィザーズは、それぞれスター選手がトレードを要求するという事態に陥ってしまったわけです。
ウェストブルックとウォールは、どちらもPGでポジションが同じ、どちらも年俸40milで金額も同じ、どちらもトレード要求していて状況も同じでした。
1対1でトレードするにはちょうどいい条件が揃っていました。
ただ、当初はお互いに駆け引きをしていました。
ロケッツは、ウォールと一緒に先発Cのトーマス・ブライアントを要求していました。
ダントーニ時代にビッグマンを一掃してしまっていたので、新体制下にビッグマンが欲しかったんですね。
ただ、ウィザーズも若手を差し出すつもりはなく、トレード話は一旦お流れになっていました。
しかし、ここにきて急にトレード話が再浮上してきたんですね。
なぜなら、「このままキャンプインするわけにもいかなかった」からです。
ギリギリまで引っ張って、より良い条件を引き出そうとしましたが、もう時間がない。
関係の悪化したスター選手同士を、キャンプで合流させてもうまくいくはずがありません。
それで最初に立ち返り、1対1でのトレードに話を戻しました。
最終的には、ウォールがどこまで復調しているかに不安があるため、ウィザーズ側がドラフト1巡目指名権を1つ差し出すことで手を打ちました。
でもこの話は、一旦話を打ち切ってから1週間ぐらい進展がなかったにもかかわらず、再び話し合いが再開されるとわずか数時間のうちにまとまったそうです。
もうこれ以上粘っても仕方ない、と諦めたんでしょうね。
他に選択肢もないし、もうキャンプが始まっちゃうから、仕切り直すなら仕切り直してキャンプをスタートさせた方がいいし。
そんなわけで、1週間ぶりに話し合いを持ったにもかかわらず、あっという間に話がまとまったそうです。
ロースターを見てみます。
<ロケッツ>
PG:ジョン・ウォール/クリス・クレモンズ/ジェリアン・グラント
SG:ジェイムズ・ハーデン/ベン・マクレモア/スターリング・ブラウン/メイソン・ジョーンズ
SF:エリック・ゴードン/デイビッド・ヌワバ/ジェラルド・グリーン/ケニヨン・マーティンJr.
PF:PJ・タッカー/ダヌエル・ハウスJr./ジェイショーン・テイト/ケニー・ウッテン
C:クリスチャン・ウッド/ディマーカス・カズンズ/ブルーノ・カボクロ
ジョン・ウォールとディマーカス・カズンズは、ケンタッキー大の同期。
同じ年のドラフトで1位と5位という高順位でNBA入りを果たしています。
今でも仲良しなのは、このツイートを見ればわかります。
ジョン・ウォールのロケッツ入りが決まったことを受けてのカズンズのツイートです。
😏
— DeMarcus Cousins (@boogiecousins) 2020年12月3日
いいですね(笑)
JOHN WALL & DEMARCUS COUSINS DOMINATED COLLEGE BASKETBALL! UNIVERSITY OF KENTUCKY
加えて、ハーデンとの相性も、ウェストブルックよりは良くなると思います。
ウェストブルックは、ハーデンと同様に、自らボールをコントロールしたいタイプ。
しかし、ロケッツだとどうしてもハーデンが優先されるため、ボールを持てない時間帯が多くなります。
そうなった時に、25.8%という致命的な3P成功率の低さが仇となり、戦力として機能しませんでした。
ウォールも決して3Pが得意なタイプではありませんが、休んでいる期間中に3Pを磨き、かなりの確率で決められるようになったと聞きます。
それが事実であれば、ハーデンと一緒にプレーしても、バランスを取って補完するような動きができると思います。
そして何より大きいのは、このオフ中も一緒にトレーニングをする機会があったという点です。
John Wall and James Harden played pickup together last month, along with Michael Beasley, Andre Drummond and P.J. Tucker 🔥
— NBA on ESPN (@ESPNNBA) 2020年12月3日
(via @RemyTraining23, remy_runs_miami, themiamiperimeter/Instagram) pic.twitter.com/zxaRNhLI9s
ハーデンとウォールを中心に、ドラモンドやPJ・タッカー、マイケル・ビーズリーらが一緒にピックアップゲームをしている動画です。
お互いにマッチアップしたりして力を確かめ合っていますし、お互いにプレーの特徴を掴むことでコンビネーションも合わせやすくなります。
それに、他のトレーニング映像も見ましたが、ウォールの動きに非常にキレがあるように見えるんですね。
これについては、デュラントもインタビューで、ウォールの動きは素晴らしかったとコメントしています。
これらの情報を踏まえると、このトレードはロケッツにとってプラスに働くのではないかと思われます。
<ウィザーズ>
PG:ラッセル・ウェストブルック/イシュマイル・スミス/ラウル・ネト/カシアス・ウィンストン
SG:ブラッドリー・ビール/ジェローム・ロビンソン/ギャリソン・マシューズ
SF:デニ・アブディーヤ/トロイ・ブラウンJr./イザック・ボンガ
PF:八村塁/ダービス・ベルターンズ/モリッツ・ワーグナー
C:トーマス・ブライアント/ロビン・ロペス/アンゼイス・パセチニクス
ウェストブルックにとっても、ウィザーズ移籍は良いことが多いです。
まず、ウィザーズのHCは、ウェストブルックがサンダー時代にHCをしていたスコット・ブルックスです。
ウェストブルックの性格も特徴も知り尽くしているHCと言えるでしょう。
加えて、同じくサンダー時代にアシスタントコーチとして親しかったロバート・パックも、現在ウィザーズのアシスタントコーチになっています。
つまり、ウェストブルックがサンダー時代に一緒にやっていたコーチ陣が、今ウィザーズにいるんですね。
自分を知っていて、よく理解しているコーチたちと一緒にやれるのは、選手にとって非常にプレーしやすい環境です。
そして、新パートナーとの相性も良いと思います。
元々シューターとして知られていたブラッドリー・ビールは、ボールを独占するタイプではなく、もらって打つのも得意なタイプ。
ジョン・ウォール不在の間、必要に迫られて司令塔的な役割も果たしましたが、本来最も得意なのは長距離砲。
自分で長くボールを持って、ドリブルしながらリズムを取るようなハーデンとは全く違うプレースタイルです。
そのため、ウェストブルックが長くボールを支配しても、最終的にボールが回ってきてショットを放てれば、それでも能力を発揮することができます。
逆に、ウェストブルックがディフェンスの注意を引きつけてくれる分、ビールへのマークが甘くなり、ショットが楽に打てるようになります。
オフェンスの迫力がなかったウィザーズにとってみても、ウェストブルックの突破力は非常に魅力的な武器になるでしょう。
八村塁にとってみても、プラスに働くと思います。
まず、ウェストブルックは同じジョーダンブランドの契約選手です。
リーグのスーパースターである大先輩とチームメイトとなれば、公私ともに強固な関係を築くことができるでしょう。
プレー的にも、だいぶ助けられると思います。
昨シーズン後半、特にビールとベルターンズが戦線を離脱して以降、八村がエース的な役割を担わなければならない時期がありました。
ただ、オフェンス面で突出した武器を持たない八村は、No.1オプションにされると局面を打開できるほどのスキルはなく、苦戦していました。
そういった意味では、ウェストブルックのように1人で局面を打開できる突破力のある選手がいて、そのサポートに回るようなサブ的な役割の方が、八村には合っていると思います。
何もみんながみんなエースになる必要はありません。
フロアのバランスを取りながら、エースに合わせて動いてサポートに回ったり、ボールが来たらフィニッシュするような役割でも、十分存在価値があるわけです。
ウェストブルックとのコンビネーションで躍動する八村の姿は、ちょっと見てみたいですね〜