ワールドカップはフランスが2回目の優勝を成し遂げましたね。
決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦を見た時、「あ、これはフランスの優勝だな」と思いましたが、やっぱりその直感は間違っていませんでした。
驚異的なスピードを見せたエムバペの突破もスゴかったんですが、ポイントはそこじゃありませんでした。
一番は、フランスのラインナップのバランスが非常に良かったからです。
性格無比なフリーキックで攻撃を指揮するグリーズマン、190cm超えとは思えない軽やかな動きで攻守に躍動するポグバ、小柄なエースストッパーのカンテ、この3人が抜群の安定感で中盤を支え、これがフランスのブレない軸になっていました。
前線もスピードスターのエムバペ、193cmの長身でポストプレーを担ったジルー、守備陣もレアルのバランとバルサのウムティティというセンターバックコンビに、186cmもあるサイドバックのパバールなど、役者が揃っていました。
最も印象的だったのは、みんなが似たようなタイプで同じようなサッカーをするのではなく、それぞれサイズも得意技も肌の色もバラバラで、尖った個性が溢れている集団であったということです。
それが流れるような連携の中で、それぞれの特長を発揮して、チームとして一つにまとまってプレーできている様子から、他のチームは敵わないだろうなと感じたのです。
思えば、前回優勝した98年のチームも、同じような印象を感じていました。
司令塔のジダンがいて、スピードスターのアンリがいて、中盤の底に長身のプティと小柄なデシャンがいて、守備にはデサイーとブランのセンターバックコンビと、サイドに長身のテュラムと、まさに今年のチームと重なるようなバラエティに富んだタレント集団でした。
アルゼンチン戦で右サイドバックのパバールが矢のようなミドルシュートを突き刺した時、同じく右サイドバックから矢のようなミドルシュートを突き刺した98年のテュラムを思い出し、デジャブかと思いました。
その時のキャプテンだったデシャンが監督を務める今年のチームは、まさにその98年のフランス代表を再現したような印象を覚え、これはフランスがいくなと感じたわけです。
唯一の難関はベルギーでした。
攻撃陣のタレントが素晴らしく、唯一負ける可能性があるとしたらここだろうと考えていました。
しかし、そこも徹底した守備的戦略で勝ちにこだわり、何とか突破をすることができました。
これだけ人種も個性も違うスター軍団が、一つにまとまってチームの戦略を忠実に遂行することは簡単なことではありません。
徹底した守備的な戦いを批判する向きもありましたが、逆にそれだけ意思統一ができるチームとしてのまとまりが素晴らしいなと思いました。
NBAも同じで、サイズのバランス、攻撃と守備のバランス、インサイドとアウトサイドのバランス、ドライブインとジャンプシュートのバランス、年齢のバランス、サラリーのバランス等々、様々なバランスが合わさってチームを構成しなければなりません。
ドラフトやFA、トレードを通してロースターを集める中で、そのバランスをいかにして取るかが重要であり、15人という限られた枠の中で、偏りのあるチームはやはり何かが足りなくなります。
オフの重要性は、タレントを集めることも大事ですが、チーム内の役割分担やバランスをいかにうまく取り、最高の組み合わせを探していくかということが最も重要なポイントになってきます。
こちらが98年のメンバー
ジダン(10)、ブラン(5)、ギバルシュ(9)、デサイー(8)、テュラム(15)、プティ(17)
カランブー(19)、ジョルカエフ(6)、デシャン(7)、リザラズ(3)、バルテス(16)
こちらはアンリ(12)が入ったバージョン
こちらが今年のメンバー
ポグバ(6)、ウムティティ(5)、エルナンデス(21)、バラン(4)、ジルー(9)、ロリス(1)
グリーズマン(7)、マテュイディ(14)、カンテ(13)、パバール(2)、エムバペ(10)
08年1回戦アルゼンチン戦の右SBパバールのゴール
98年グループリーグ・デンマーク戦の守備的MFプティのゴール
98年決勝ブラジル戦の守備的MFプティのゴール
08年決勝クロアチア戦の守備的MFポグバのゴール