長〜く続いたスパーズとレオナルド君のスタンドオフが、ようやく終わりを迎えたようです。
行き先はラプターズ。デローザンとのトレードとなりました。
<トレード概要>
カワイ・レオナード+ダニー・グリーン ⇔ デマー・デローザン+ヤコブ・ポエルトル+1巡目指名権
【ラプターズ】
PG:カイル・ラウリー/フレッド・ヴァンフリート/デロン・ライト
SG:ダニー・グリーン/CJ・マイルズ/ノーマン・パウエル
SF:カワイ・レオナード/OG・アヌノビー
PF:セルジュ・イバカ/パスカル・シアカム
C:ヨナス・ヴァランシウナス
【スパーズ】
PG:デジョンテ・マレー/パトリック・ミルズ
SG:デマー・デローザン/マルコ・ベリネッリ/マヌ・ジノビリ
SF:ルディ・ゲイ/ダンテ・カニングハム
PF:ラマーカス・オルドリッジ/デイビス・ベルターンズ
まずはこれまでの流れから。
当初トレード希望を出した際、レイカーズに行きたいと言っていたのは既報の通りです。
それを受け、最初はレイカーズやシクサーズ、セルティックスなどが移籍先候補として取り沙汰されていました。
しかし、その有力候補だったチームたちは、いずれも主力選手を出すのを嫌がりました。
例えば、レイカーズだったらブランドン・イングラムとカイル・クーズマは出さないよ、とか。
シクサーズはエンビード、シモンズ、フルツはNG、セルティックスならBIG3とテイタム、ジェイレン・ブラウンはダメといった具合です。
スパーズはフランチャイズプレイヤーを出そうとしてるのに、その交換相手がロールプレイヤーしかいなかったら、当然交渉は成立しませんね。
なので、当初有力視されたチームは、トレード交渉がうまくいきませんでした。
そこへ急浮上してきたのがラプターズでした。
ラプターズはエースのデローザンを差し出してきたので、若手を出すのも渋っていた他のチームに比べると、オールスター選手を出してきたラプターズの方が条件がよかったわけです。
ではなぜ、ラプターズはデローザンを手放したのでしょう?
ラプターズはここ5年連続でAクラス入りを果たし、常にイーストの上位をキープする安定した成績を残していました。
その一方で、プレーオフになるとレギュラーシーズン中の強さを発揮できず、勝ち進むことができない日々が続きました。
特に、ルブロンが高い壁となって立ちはだかり、今年もまた例外ではありませんでした。
いつも安定して勝ち星を挙げられるチームではあるが、ここ一番の勝負所では個の力に負けてしまう。
そんな中途半端なイメージが定着していました。
昨シーズンは初めてカンファレンストップの座を獲得し、No.1シードとしてプレーオフに臨む、最高の形を作ることができました。
でも、それでもまだなお、個の力を突破することができず、第4シードのキャブスにスウィープされるという屈辱を味わいました。
レギュラーシーズンでベストの成績を残しても、まだなおプレーオフを勝ち抜けない。
この結果を受けて、GMのマサイ・ウジリは一つの決断を下します。
「このままでは勝てない」と。
レギュラーシーズンでNo.1の成績を残したということは、やるべきことは全てやり、最高の結果をもたらしたということです。
それでもまだプレーオフで勝てないなら、もうチームのコアを根本的に見直すしかないということです。
そこでまず、HCのドゥエイン・ケイシーを解雇しました。
ただ、勝てなかった原因はケイシーの采配のせいではないと思います。
その証拠に、ケイシーは解雇された後に、その年のコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
つまり、ケイシーが悪かったわけではないけど、何かを大きく変えなきゃ現状は打破できないので、まずトップから変えたということです。
そうなると、次はチームのエースです。
ここ5〜6年、デローザンとラウリーのバックコートコンビがチームの中心的存在でした。
2人ともオールスターに選ばれるなど活躍はしていましたが、圧倒的な個の力というよりは、どちらかと言うとチームの一部という感じです。
レギュラーシーズンはそれでも良かったんですが、プレーオフになるとその個の力の弱さが出て、優勝を狙うチームとしては物足りなさが残りました。
今年のプレーオフも、2連敗で迎えたキャブスとのGAME3の終盤、不調だったエースのデローザンをベンチに置いたままにするという選択をしました。
シーズンの勝負がかかった大事な1戦で、エースを頼りにできないという状況は、もはや健全なチームとは言えない状態でした。
HCとエースを放出し、チームを作り直そうという方向性は、おそらくこの段階で決まっていたのではないかと思います。
デローザンをエースとしたチーム作りは、もう限界だと判断したわけです。
ただ、レオナルド君獲得にも大きな問題がありました。
それは残り契約が1年であるということ、そしてレイカーズ行きを希望しているということです。
つまり、トレードで獲得できたとしても、1年後のオフにはFAとなって出ていかれてしまう可能性が高いということです。
先述の移籍候補先チームが、若手有望選手を出したがらなかった理由がここにあります。
ずっといてくれるならまだしも、たった1年のレンタル移籍だったら、将来のタレントを手放すわけにはいかない、というわけです。
まあ、そりゃそうですよね。
ただラプターズは状況が違いました。
ひとたびデローザンに見切りをつけると判断したら、年28milがあと3年も残る大型契約は重荷になります。
ラプターズとしては、これを手放さないとサラリーキャップを自由に使えません。
レオナルド君の獲得にあたっては、ポール・ジョージのような事例がベストなシナリオです。
ジョージがペイサーズにトレードを要求した際、FAになったら故郷のLAに戻るのではないかと噂されていました。
しかし、残り契約1年のジョージをサンダーがトレードで獲得すると、1シーズン過ごす中でチームへの愛着が生まれ、ジョージは当初希望していたレイカーズ行きをやめ、サンダーと再契約しました。
ラプターズも、レオナルド君がチームと再契約を結んでくれるのがベストです。
でも、それがダメだった場合のプランBも想定していると思います。
仮にレオナルド君が噂通りレイカーズに行ってしまったとしても、20mil分のキャップの空きが残ります。
来オフのFA市場はオールスター級の選手がいっぱい出てくるので、その空きを使ってまた新たなエース候補を獲得することが可能です。
しかし、ここでデローザンを放出しなければ、少なくとも向こう3年間はこのまま現体制で勝負していかなければなりません。
今回のプレーオフで「このままでは勝てない」と見切りをつけたとすれば、ここでデローザンの契約を放出しなければ、チームを変えられなくなります。
つまり、レオナルド君が残ってくれたらそれは万々歳だけど、ダメだったとしてもチーム再建がしやすい自由度を作れるなら、どっちに転んでもこのトレードはやるべき、という判断になるわけです。
マサイ・ウジリGMは、その手腕を買われてナゲッツから引き抜かれ、ラプターズをイースト有数の強豪に仕立て上げました。
セルティックスのGMダニー・エインジもそうですが、優秀なGMは、リスクを負っても時に思い切った大ナタを振るいます。
シクサーズこそ、SFのディフェンス力とシュート力を最も必要としていたチーム。
ここで思い切ったトレード戦略を取れなかったところに、GM不在の影響を感じます。
おそらくラプターズのロースター変革はこれで終わりではないと思うので、今後の動きを注視していきたいと思います。