ビッグニュースですね!
これは本当にスゴイことです。
狭き門をくぐり抜けたというか、こじ開けて入った感じで、快挙と言っても過言ではないと思います。
それぐらいスゴイことです。
ここでも少し触れましたが、トレーニングキャンプのロースターについてもう一度おさらいをしておきます。
まず、NBAチームの正式なロースターに入れるのは15人。
プラス2way契約を2人まで入れられるので、最大で17人まで選手を確保できます。
開幕前のトレーニングキャンプは、その枠を20人まで広げることができるので、一時的にあと3人加えることができます。
ざっくり言うと、こんなイメージです。
・正式契約(15人):キャンプ前のFA市場で決まる。ほとんどがギャランティー契約。
・2way契約(2人):上限2年まで。シーズン途中での入れ替えも可能。
・キャンプ契約(3人):ノンギャランティー契約。開幕前にほぼカットされる。
正式契約の15人は、オフの間に行われる一連のFA契約で大体決まってしまいます。
そして、そのほとんどがギャランティー契約なので、それがそのまま開幕ロースターになるケースがほとんどです。
一方、ノンギャランティー契約の3人は、キャンプ用の練習要員というか、数合わせで呼ばれるようなイメージで、キャンプとプレシーズンマッチが終わると、開幕前に全員カットされるのが常です。
つまり、何が言いたいかというと、キャンプをやらずとも開幕ロースターはほぼ決まっており、キャンプ契約で呼ばれた3人がロースターに残る可能性は、最初っからほとんどないんです。
今回、渡邊はこのキャンプ契約の3人のうちの1人として呼ばれました。
なので、開幕ロースター入りできる可能性は低く、傘下のGリーグチームに所属して、ケガ人が出た時のコールアップを待つのが現実的な路線でした。
ちなみに、キャンプ契約の他の2人は、渡邊よりも実績のある選手でした。
ヘンリー・エレンソンは、2016年1巡目18位指名を受けたセンター。
まだ23才と若く、既にNBAで4シーズンのキャリアがあります。
アリーゼ・ジョンソンは、2018年2巡目50位指名でペイサーズ入りしたPF。
昨シーズンまで15人の正式ロースターに2シーズン在籍していました。
2018年ドラフト外で、2way契約2シーズンの渡邊よりも、実績は上なわけです。
まずスタートラインで、この2人よりも後ろからのスタートとなっていました。
この中では、エレンソンが一番ポピュラーでした。
というのも、ラプターズ傘下のGリーグチームに所属し、21.8点/9.2リバウンド/FG54.5%/3P42.6%という好成績を残していたためです。
“2軍”のチームでエース的な活躍をしていたということは、馴染みもあるし、プレーぶりもよく知っているということになりますね。
さらに、ドラフト順位も一番上ですから、実績が一番上と言えるわけです。
そして、昨シーズンの2way契約には、オシェイ・ブリセットとポール・ワトソンという2人の選手がいました。
ブリセットは、昨年シラキュース大を2年でアーリーエントリーしましたが指名されず、ラプターズと2way契約を結びました。
地元トロント出身のカナダ人選手として、カナダ代表にも入っています。
ワトソンは、昨シーズン途中にホークスと10日間契約を結んだ後、ラプターズと2way契約。
レギュラーシーズン最終戦では、27分の出場で22点・6リバウンドを挙げました。
この辺りが当落線上の選手たちということで、トレーニングキャンプとプレシーズンマッチで誰が生き残るかのサバイバルレースとなりました。
そんな中、渡邊はアピールをし続けました。
プレシーズンマッチでは、限られた出場時間の中で確実に結果を残しました。
◯12/12 ホーネッツ戦:12分・5点・4R・3P1/2・+4
◯12/14 ホーネッツ戦:9分・3点・3R・1A・FG1/1・+9
◯12/18 ヒート戦:9分・6点・4R・2A・1S・3P2/3・+3
特筆すべきは、3P成功率とプラスマイナス(チームの得失点差)です。
3&Dプレイヤーとして大事な3Pは、3/5本成功の60%と好調。
また、渡邊が出場した時間帯は3試合とも、チームの得失点差がプラスでした。
つまり、渡邊が出場している時は、常に相手とのリードを広げたんですね。
これはある意味、個人スタッツよりも重要な指標です。
勝つために必要な選手、チームに置いておきたい選手、ということになります。
その結果、山が動いたんですね。
通常は、キャンプ契約の3人がカットされて終わりのところですが、ラプターズが発表した3人のカットは・・・・
ヘンリー・エレンソン、アリーゼ・ジョンソン、そしてオシェイ・ブリセットでした。
この瞬間、渡邊が最終メンバー17人の中に含まれることが決まりました。
これは本当にスゴイことです。
ある意味、ドラフト指名されるよりもスゴイことです。
ドラフトは、サイズや若さ、身体能力など、実力以上にポテンシャルが評価されることが多く、所属する大学の知名度やNCAAトーナメントの結果なども影響します。
つまり、実力以外の何かで評価されることも多いため、当たり外れがあります。
ドラフト順位通りに活躍しないケースがたびたびあるのはそのためです。
しかし、トレーニングキャンプでのサバイバルは、完全に実力の世界。
ドラフト順位や出身大学は関係ありません。
そこでどんなプレーを見せるか、どれだけチームに順応できるか、が勝負になります。
つまり、完全に実力だけで評価されるサバイバルで勝ち残ったという事実がスゴイんです。
しかも、最後の一枠をオシェイ・ブリセットから奪い取ったこともスゴイです。
ブリセットは、地元トロント出身のカナダ代表選手。
地元出身の若手ならじっくり育てたかったでしょうし、地元ファンにも人気だったはずです。
そんな選手をカットしてまで、手元に置いておきたいと思わせる活躍をした、ということになります。
もし同じぐらいの活躍度だったなら、無名のアジア人よりも、地元カナダの選手を残していたでしょう。
そんな“ホームコート・アドバンテージ”も吹っ飛ばして、最後のイスを勝ち取ったのは本当にスゴイことなんですね。
赤:移籍
青:ルーキー
緑:2way契約
<ラプターズ>
PG:カイル・ラウリー/マラカイ・フリン/ジェイレン・ハリス
SG:フレッド・バンブリート/テレンス・デイビス/マット・トーマス/ポール・ワトソン
SF:OG・アヌノビー/ノーマン・パウエル/ディアンドレ・ベンブリー/パトリック・マッコウ
PF:パスカル・シアカム/クリス・ブシェー/スタンリー・ジョンソン/渡邊雄太
C:アーロン・ベインズ/アレックス・レン
それにしてもラプターズは、ドラフト外の無名選手をローテーション・プレイヤーに育てるというか、見出すことに長けています。
フレッド・バンブリートがドラフト外から這い上がったのは有名かもしれませんが、昨シーズンにオールルーキーセカンドチームに選ばれたテレンス・デイビスをはじめ、クリス・ブシェーやマット・トーマス、ポール・ワトソンといった選手たちは、いずれもドラフト指名されなかった選手たちです。
現在主力の選手たちも、ラウリー(24位)、シアカム(27位)、アヌノビー(23位)、パウエル(46位)など、ドラフト指名されていても、下位で無名な選手たちばかりでした。
今年1巡目29位で指名したPGマラカイ・フリンも、プレシーズンからしっかり結果を残していて、開幕から即戦力となるでしょう。
無名でも確かな力がある選手を見極め、集めてくる。
そしてチーム戦術に合う形にしっかり育てる。
そんなラプターズの堅実な育成方針が見えてきます。
だからこそ、渡邊はいいチームに拾われたなあと思います。
個人スタッツではなく、しっかりと個の能力を見定め、チーム戦術の中で生きる選手として評価してくれたからこその契約だと思います。
そして、グリズリーズでの2年間とは違い、今回は同じ2way契約でも、最初から戦力として見てくれていると思います。
ここで期待通りの役割を果たせば、ポール・ワトソンのように2way契約から本契約へと移行してもらえる日が来るかもしれません。
今後の活躍がますます楽しみになってきましたね!