さて、「オーランド・バブル」の「シーディング・ゲームス」も最終週となりました。
8試合だけという再開シーズンで、各チーム5〜6試合が経過したところですが、この短い期間の中にも様々な展開がありました。
ここでは、個人的に光る活躍をした選手にスポットを当てて、その活躍度合いを振り返ってみたいと思います。
一気にブレイクした選手、再評価を受けた選手、凄みを増した選手などなど、数試合だけとは思えない盛り上がりです!
①TJ・ウォーレン(ペイサーズ)
「オーランド・バブル」の得点王は、意外な人物でした。
初戦のシクサーズ戦でいきなり53点を叩き出すと、そのままの勢いで30点超えのゲームを連発。
ここまで5試合の平均で、34.8点・FG60.5%・3Pは20/36成功の55.6%と大爆発しています。
しかも、ウォーレンが30点以上挙げた4試合は、いずれも負けなし。
その4試合に限ると、平均39.5点・FG66.0%・3Pは19/31成功の61.3%というトンでもない数字になります。
元々安定したスコアラーであるウォーレンは、ここ3シーズン続けて平均20点近くのアベレージを残していました。
ただこの「バブル」では、サボニスがケガで欠場、オラディポも出るか出ないかわからないという状況の中で、必然的に攻撃のメインオプションとなる役割が回ってきました。
にしてもスゴイ数字です。
覚醒のポイントは、3Pでした。
元々あまり3Pを打たず、2Pをコンスタントに稼ぐタイプだったウォーレンですが、昨シーズンから徐々に3Pの数も増やしてきました。
といっても、今シーズンの平均試投数は3.3本、成功数は1.3本とまだまだ多いとは言えませんでした。
ネイト・マクミランHCも、「もっと3Pを打て」と言い続けてきたそうです。
そしてこの「バブル」では、平均試投数7.2本、成功数は4本と一気に伸ばしてきました。
30点超えの4試合に限れば、平均試投数が7.8本、成功数は4.8本です。
53点のゲームでは、12本も打って9本も成功させています。
これまで3Pをあまり打たなかった選手が、3Pを武器にできるようになったことで、元々得意であった2Pショットと組み合わせて、「どこからでも得点できる存在」へと変わっていったと言えます。
ただ、ウォーレンというと、どうしても1年前のこれを思い出します。
これだけの選手をどうしてタダで放出したのか?
この時もただただ「謎だ」と書きましたが、やっぱり解せないですね。
チームを強くするのは、選手ではなくマネージメントだと言われます。
つまり、GMなどのチームのフロントですね。
ウォーレンの今回の活躍を見て、ますますそう実感しました。
「未完の大器」がついに覚醒しました。
1年目を全休し、2年目の今シーズンが実質的なルーキーシーズンとなるマイケル・ポーターJr.。
ただPFポジションは、先発のポール・ミルサップ、バックアップのジェラミ・グラントと層が厚く、なかなか出場する機会に恵まれませんでした。
ところが、この「バブル」で急にチャンスが巡ってきました。
ジャマール・マレー、ゲイリー・ハリス、ウィル・バートンの先発3人が間に合わず、ガード陣が手薄になったことで、センターのヨキッチがPGを務めたりする緊急事態に。
その結果、ポーターに先発SFという役目が回ってきたわけです。
6−10(208cm)の長身で本来はPFのポーターですが、3Pを打ててハンドリングもできるため、SFをこなすこともできます。
初戦こそ不発でしたが、2戦目に37点・12リバウンドと爆発すると、続く3戦目も30点・15リバウンドと2試合連続で30点オーバーのダブルダブルをマーク。
その後も安定した働くを見せ、4試合の平均は29.3点・12.5リバウンド・FG56.3%・3P46.7%・FT95.8%という堂々たる成績を残しています。
5戦目にはマレーが復帰し、ヨキッチ、ポーターと「新BIG3」を形成したナゲッツは、3人で77点を上げて勝利しました。
プレーオフ本番でもこの「新BIG3」が機能すれば、ナゲッツの武器が増えることになるでしょう。
そして、ポーターといえばこれを忘れてはいけません。
大学シーズンが始まる前にドラフト1位候補だったポーターでしたが、1年生のシーズンをケガでほとんど出られなかったことで評価が急落。
1巡目14位まで指名されませんでした。
このことが後ほどどう響いてくるかと楽しみにしていましたが、やっぱり実力を発揮してきました。
今頃ポーターをスルーした上位13チームは、どういう思いでポーターの覚醒を見ているのでしょうね?
③デビン・ブッカー(サンズ)
NBA5シーズン目を迎えるブッカーは、リーグ屈指のスコアラーとしての地位を確固たるものにしています。
特にここ3シーズンは平均25点前後をマークしており、リーグのトップスコアラーの1人であることは間違いありません。
しかし、トッププレイヤーとしての評価は受けていないのが現状です。
今シーズンも、抜群のスタッツを残したいたにもかかわらず、オールスターにも選出されませんでした。(その後、代替選手として出場)
その原因は、チームがプレーオフに出場できていないこと。
ブッカーも、入団以来5シーズンで一度もプレーオフに出場できていません。
ただこれは、TJ・ウォーレンのところで前述した通り、選手のせいではなく、チームのマネージメントのせいです。
しかし世間は、勝てないチームのエースであるブッカーに、「スタッツはいいけどチームを勝たせることができない選手」というレッテルを貼りました。
でもそれは正しい評価ではありません。
単なるシューターだと思われがちなブッカーですが、毎年アシストの数字をアップさせていて、昨シーズンは平均6.8本、今シーズンも6.6本というPG並みのアシスト数を記録しています。
つまり、自らのショットだけでなく、チームメイトの得点も演出するオールラウンドプレイヤーへと成長しているわけです。
そして今回の「バブル」で、サンズが無傷の5連勝を遂げたことで、周囲の評価が変わりつつあります。
それを決定的にしたのは、優勝候補のクリッパーズ戦で見せてブザービーターです。
Devin Booker Buzzer-Beater Game Winner vs Clippers with PG All Over Him!
カワイ・レナードとポール・ジョージという、リーグ屈指のディフェンダー2人に徹底マークを受けながら決めたショットは、非常に難易度が高いものでした。
この優勝候補を撃破するブザービーターと、バブル唯一の5連勝に導いた結果から、ブッカーはこれまでの評価を覆し、「チームを勝たせることができる選手」と認識されたのではないかと思います。
④デイミアン・リラード(ブレイザーズ)
こちらは既に勝利を呼べる選手として認知されているリラードですが、やっぱり「らしさ」を見せています。
ここ2シーズン続けてカンファレンス3位につけていたブレイザーズですが、今シーズンは主力のケガもあってプレーオフ圏外に沈んでいました。
しかし、本来はカンファレンス上位の力があるチームですから、メンバーさえ揃えば強さを見せるはず。
そんな評価もあって、再開後のシーズンは上がってくるだろうと予想されていました。
その中心にあるリラードは、勝負強さではピカイチの存在。
これまでも様々なハイライトシーンを生み出してきました。
今回の「バブル」でも、セルティックス戦で30点・16アシスト、ナゲッツ戦で45点・12アシスト、シクサーズ戦で51点・7アシストと爆発。
6試合で平均33.0点・9.5アシスト・FG47.4%をマークしています。
特に45点を挙げたナゲッツ戦では、3P11/18本成功。
リズムに乗ると、もはや3Pラインがどこかも気にせずにポンポンと放ち、ラインのはるか後方からでもおもしろいように決まっていく様は痛快です。
Damian Lillard (45 PTS) Torched The Nuggets From 3PT Land
おそらくプレーオフ最後のイスに座るのはブレイザーズになると思いますので、プレーオフでもまた超絶プレーを見るのが楽しみです。
ブレイザーズからもう1人、2年目の若手ゲイリー・トレントJr.です。
SGにはCJ・マッカラムがいるため全てベンチスタートですが、「バブル」最初の5試合で平均20.6点・FG57.6%とブレイクしています。
特に3Pがスゴく、28/45本成功の62.2%と当たっています。
これは、1試合あたり5.6本の3Pを成功させている計算になります。
先発でもスゴイ数字ですが、全てベンチからですからね。
レギュラーシーズンは、ロドニー・フッドやケント・ベイズモア、トレバー・アリーザといったベテランたちがいたため、ベンチからもなかなか出られない日々が続きました。
しかし、フッドがケガ、ベイズモアは移籍、アリーザが不出場となったことで、ようやくまとまったプレータイムがもらえるようになりました。
このチャンスを生かし、シーズン平均8.7点だったアベレージを大きく上回る大躍進。
特に3Pが、セルティックス戦で7/11本、ナゲッツ戦で7/10本、クリッパーズ戦で6/10本成功。
5試合で28本成功は、リラードの23本、マッカラムの17本をも上回って、チームNo.1です。
ユスフ・ヌルキッチやカーメロ・アンソニーも好調なブレイザーズは、この大事な時期にチーム力がグンと上がりました。
プレーオフで対戦する上位チームにとってみれば、できれば対戦したくない怖い存在となりそうです。
⑥ルカ・ドンチッチ(マブス)
MVPクラスの活躍を続けるドンチッチは、この「バブル」でもますます凄みを増しています。
それはスタッツが物語っています。
・対ロケッツ戦:28点・13リバウンド・10アシスト
・対サンズ戦:40点・8リバウンド・11アシスト
・対キングス戦:34点・20リバウンド・12アシスト
・対クリッパーズ戦:29点・3リバウンド・6アシスト
・対バックス戦:36点・14リバウンド・19アシスト
★5試合の平均:33.4点・11.6リバウンド・11.6アシスト
もう平均でトリプルダブルですよ。
しかも優に30点超えの。
さらには、40点のゲームもあり、20リバウンドのゲームもあり、19アシストのゲームもあり・・・・
毎試合がお祭り騒ぎというか、トリプルダブルってこんな簡単にクリアしちゃっていいのかな?と勘違いするレベルです。
そして、優勝候補のバックス相手に見せた19アシスト目のパフォーマンスが話題になっています。
Every Angle: Luka's Between The Legs Dime!
これの何がスゴイって、単なる足の間を通したトリッキーなパスっていうだけじゃないんです。
一番スゴイのは、これを勝敗の懸かった最終局面でやったということなんです。
相手はリーグ最高勝率のバックス。
オーバータイムにもつれ込む接戦で、OTも残り1分で2点差というシビれる場面です。
要は、絶対ミスが許されない勝負所の場面なんです。
そこでこんなことができますかっていう話ですよ!
普通の選手だったら、ミスになるのが怖いのでリスキーなプレーは避けるでしょう。
ただ、この男にそういうセオリーは通用しないんでしょうね。
セーフティリードをしている余裕のある場面なんだったらわかりますよ。
でも、そうじゃありませんからね!
しかも、ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤー最有力のアデトクンボにマークされながら、それを手玉に取っているわけです。
この人はプレッシャーを感じることはあるんでしょうか???
あまりの強心臓ぶりに、見てる方がビックリしてしまいます。
よく「試合を楽しむ」とか言われますが、この人ほど本当の意味で試合を楽しんでる人はいないんじゃないかな?と思います。
いやぁ〜、スゴイ。
プレーオフの楽しみがまた1つ増えました。