NBAのファイナル4が決まりました。
3カードはほぼ予想通りの結果でしたが、Boston vs. Philadelphia だけは予想外でした。
シクサーズは若さが違う方向に出て、試合巧者のセルティックスにやられました。
ただ、セルティックスの主力も若手が中心。
ジェイソン・テイタムはルーキー、ジェイレン・ブラウンが2年目、テリー・ロジアーは3年目、ベテランの風格があるマーカス・スマートもまだ4年目の若手です。
ベテランと呼べるのは、ホーフォードとマーカス・モーリス、アーロン・ベインズぐらいです。
つまり、決して“若いから”というだけの理由で勝敗が決したわけではないということです。
シリーズの中で最も印象に残ったのは、GAME3の決勝点となったオーバータイムでのワンプレーでした。
シリーズ前、勢いが上かな?と思われたシクサーズが、敵地で2連敗してホームに戻ってきたGAME3。
ここで勝つと、若いシクサーズが再び息を吹き返し、勢いを取り戻す可能性もありました。
4Q最後にベリネッリの劇的な同点ブザービーターでオーバータイムに持ち込み、シクサーズに流れがあるかな?という雰囲気もありました。
その流れを止め、逆転の決勝シュートを決めたのがこのプレーです。
このプレーの何がスゴイと思ったのか。
順番に説明していきたいと思います。
まず、マッチアップを確認していきます。
PG ロジアー ⇔ マッコネル
SG ブラウン ⇔ シモンズ(6-10/208cm)
SF テイタム ⇔ コビントン(6-9/206cm)
PF モーリス ⇔ イリャソワ(6-10/208cm)
C ホーフォード ⇔ エンビード(7-0/213cm)
ボストンのHCブラッド・スティーブンスは、最後のショットをホーフォードにゴール下で打たせるために、ある策を練りました。
それは、高い壁であるエンビードをホーフォードから遠ざけ、なるべく身長の低い相手にスイッチさせる、という作戦です。
つまり、上記のマッチアップで言うと、4人の中で最もサイズの低いコビントンがそのターゲットとなりました。
まず、PGの2人がバックコート方向に走り去っていきます。
ホーフォード(緑42)とエンビードが真ん中に、ブラウンとシモンズ(白25)がエンドライン沿いにいます。
そして、向こうサイドからコビントンにマークされたテイタムが、こちらに向かって走ってきます。
テイタムはブラウンのマークマンであるシモンズ(白25)に向かって走り、それと同時にブラウンはホーフォードのマークマンであるエンビード(白21)に向かって走っていきます。
テイタムとブラウンは、ちょうどクロス(十字)を描くように入れ替わっていきます。
ブラウンのマークマンだったシモンズ(白25)は走ってきたテイタムに邪魔され、ブラウンを追いかけることができません。
ホーフォードもテイタムのマークマンだったコビントンをスクリーンで抑えているため、ブラウンがフリーで3Pライン方向へ抜けていきます。
ここでブラウンにボールが入れば、フリーで3Pを打たれる危険があるので、エンビードはブラウンを追いかけざるをえない状況になります。
ブラウンはエンビードを、テイタムはシモンズを、それぞれ3Pライン方向へ連れていきます。
そうすることで、ペイント付近でホーフォードとコビントンの1対1という形が生まれます。
ホーフォードをマークしなければいけなくなったコビントンは、身長差をカバーしようとフロント(前)に入ってディナイ・ディフェンスを試みます。
コビントンがディナイをしようと前に出ることで、ホーフォードの後ろに誰もいないスペース(緑色の部分)が生まれます。
その後ろに空いた緑色のスペースを目がけて、コビントンの頭越しに山なりのパスを投げ入れます。
インバウンズパスをつかんだホーフォードは、ほぼフリーの状態でゴール下のイージーショットを決めました。
プレーオフのオーバータイム残り数秒という場面で、ゴール下でノーマークのショットが打てる状況を作り出すというのは至難の業です。
それを現実のものとするために、複数のスクリーンやスイッチを駆使し、相手の出方も先読みした上で、理想的な最後のフィニッシュの形へと導く青写真を描いてみせたわけです。
タイムアウトで指示を受けた時、ホーフォードは「(コーチが何を言っているのか)よく理解できなかった」と言っていました。
しかし、その指示通りに動いた結果は相手チームを完全に惑わし、決勝の逆転ショットを演出。
「天才的なプレーコールだ。信じられない」と感嘆の声を挙げました。
ボールを入れたマーカス・モーリスも、「彼にはこうなることが見えていたんだ」と絶賛していました。
実はこの前の4Qの最後にも、同じようにインバウンズパスからのプレーコールで、ジェイレン・ブラウンをゴール下でノーマークにしてレイアップで勝ち越しのショットを決めさせる場面がありました。
同じ試合で一度ならず二度もそんな状況を作り出すなんて、本当に天才的なコーチングですね。
1on1で局面を打開できるスーパーエースがいない現在のチーム事情の中では、このブラッド・スティーブンスの頭脳的なプレーコールが欠かせません。
だって、一番有名な選手がホーフォードなんですよ?
よくこの戦力で、こんなにプレーオフを勝ち進めるものだと感心します。
来シーズンには、カイリー・アービングとゴードン・ヘイワードが帰ってきます。
“ホーフォードと若手たち”でカンファレンス・ファイナルまで進めるチームにこのオールスター2人が戻ってきたら、いったいどんだけ強くなるのか今から楽しみで仕方ありません。
ルブロンとのカンファレンス・ファイナルも、伸び盛りの若手たちにとって最高の経験となるはずです。
今後しばらく、セルティックスとシクサーズの2強時代が到来するのかもしれませんね。
ちなみに、NBAの「Coach of the year」とは別に、30チームのHCが選ぶ「Coach of the year」の投票があったそうです。
そこで選ばれたのはラプターズのドゥエイン・ケイシーで、意外にもブラッド・スティーブンスには1票も入らなかったそうです。
しかしプレーオフでは、スティーブンスがオールスター2人を欠いたラインナップでカンファレンス・ファイナルまで駒を進める一方で、第1シードで臨んだラプターズは2年連続でキャブズにスイープ負け。
ケイシーはイーストトップの59勝をマークしながら、シーズン終了後に解雇されるという憂き目に遭いました。。
この人がブラッド・スティーブンス
まだ41才という若手HCです
ボストンに来て5シーズン、毎年勝ち星を増やしています
エースのカイリーも全幅の信頼を置いています
実はスティーブンスとヘイワードは大学時代からのコンビでした
強豪とは言えないバトラー大を2年連続でNCAAファイナルへと導きました
ヘイワードの移籍もスティーブンスの存在あってこそ
ボストンがイーストを席巻する日も近い